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M&Aの労務DD実施のポイント

 企業の合併や買収(M&A)において、労務デューデリジェンス(労務DD)は極めて重要なプロセスです。労務DDの実施は、取引の成功に不可欠なだけでなく、従業員のモチベーションと組織の安定性を保つためにも欠かせません。このプロセスを通じて、労働契約や労働条件、労使関係、福利厚生制度などの詳細を把握し、潜在的なリスクを事前に特定することが求められます。この記事では、労務DD実施のポイントについて詳しく解説します。

 IPOのための労務DD(デューデリジェンス)と、M&Aのための労務DDは、労務管理体制の現状を把握するという目的は同じですが、実施のための段取りや、調査対象となる項目の決定方法は大きく異なります。

 M&Aの労務DDを行う場合、それと同時期に財務DD、事業DD、法務DDなどの各分野のDDが行われることが一般的ですが、M&Aを行うためには限られた時間の中で迅速な意思決定をしなければならず、期間的な余裕をもってDDを実施できることはあまりありません。

 売り手企業にとって自社のM&Aの情報は最高機密事項であるため、労務DDのヒアリング相手が幹部クラスのみということも多いです。

 労務DDでは労働時間管理や割増賃金計算の細かな運用まで確認しなければなりませんが、幹部クラスへのヒアリングだけでは実態把握が難しいケースもM&Aの労務DDでは珍しくありません。

 また、M&Aの労務DDはIPOの労務DDとは異なり、DDの対象とする範囲は買い手企業が必要と判断した項目であるという点です。M&Aの労務DDの目的は、買収するに値する労務管理体制であるか、未払賃金がどの程度存在しているのか、という点を把握するために行うものですので、買い手企業が不要と判断した項目については、時間・費用の関係で省略するという判断も出てきます。

多少のリスクは受け入れて、ごく一部の項目のDDにとどめるケースもあります。

 このように、M&Aにおける労務DDは、与えられた状況の中でいかに意味のあるDDが実施できるか、という点が重要なポイントになります。

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